2011年3月30日水曜日

【学習1–4】音節


拍を分割して言葉を詰め込むためには、言葉の「数」の違いを知る必要があります。
1つは「見た目の文字数」、もう1つは「実際に口に出して言ったときの発音数」です。
そして、後者を音節(シラブル、syllable)といいます。



たとえば「ばなな」と「しんかんせん」という言葉を考えてみます。
前者の「ばなな」は、字数も発音数も「ば・な・な」と3つです。
一方、「しんかんせん」の文字数は6つですが、発音数は「しん・かん・せん」の3つです。
つまり、視覚的には文字数が多いように見えても、実際の発音数は多くない、という場合があるわけです。

これは後述することになりますが、文字数と発音数が違うことは、ただ数が異なるだけでなく、
聴き心地の良さも同時にもちます。つまり、「ば・な・な」と言うより「しん・かん・せん」と言ったほうが聴き心地が良い。
ヒップホップも、その言葉自体が「ひっ・ぷ・ほっ・ぷ」あるいは「ひっ(ぷ)・ほっ(ぷ)」と、少ない発音数です。
ライムスターの「WE LOVE HIP HOP」のコーラスでは、2音節で発音されています。


(0:09から)

We love Hip Hop
Do you like Hip Hop?
賛同者たちゃ Put your hands up!
して言えよ Yeah!

2011年3月23日水曜日

【学習1–3】拍の分割


4ビート、8ビート、16ビート

前回の『イッサイガッサイ」のダイアグラムを見れば分かるように、
たいていのラップは1拍の中に言葉を複数並べています。
(もちろん、ほとんどのJ-POPも同様です。)
1つの長細い箱に言葉を詰め込んでいるようなイメージです。

しかし、このイメージは正確ではありません。
より正確には、1つの長細い箱を更に分割して複数の箱にして、
それぞれの箱に言葉を入れているイメージが適当です。
言いかえれば、1拍を細かく分けたうえで、言葉を当てはめています。

よく「4ビート(フォービート)」や「8ビート(エイトビート)」などの
言葉を聞くことがあると思いますが、これはその分割の度合いのことです。

たとえば、
8ビート:1拍を2分割したもの(4拍×2分割)
16ビート:1拍を4分割したもの(4拍×4分割)
などです(図1、図2)。


16ビートのラップ

最後に、16ビートを上手く乗りこなしているラッパーとして、
Mummy-D(Rhymester、ライムスター)を聴いてみます。
『グレイゾーン』に収録された「ザ・グレート・アマチュアリズム」から、
彼の最初の4小節を取り上げてみました。
個人的には、3小節目の「(ぱら)さい(と)」と、
4小節目の「(くたばら)ない」の強調に、16ビートの気持ちよさを感じます。


(0:50から)

俺の名前はトーシロー よく聞きな
道行くトーシロー つまり同志よ
素晴らしい 音楽史のパラサイト
ヒップホップは まだくたばらない
(図3)

2011年3月6日日曜日

【学習1–2】フロウ・ダイアグラム



拍と小節について、ここまでは文章によって説明してきましたが、
ここでは図を用いて説明し直します。図は文章よりも理解を助けてくれるはずです。

図は、『How To Rap』で使われている「フロウ・ダイアグラム」(※図1)を参照させてもらいました。
以下、今後のエントリでもダイアグラムを利用して話を進めていくつもりです。

まず、このダイアグラムの説明をします。
最上段に書かれている数字が、拍(拍子、beat)の数です
1行が1小節と対応しています。

前回取り上げた「ポリリズム」をこのダイアグラムに置いて、確認してみましょう(図2)。

■ラップの配置、ダイアグラムのコツ

では、次にこのダイアグラムにラップを配置してみましょう。
KREVA(クレバ)の「イッサイガッサイ」から、1バースの最初の2小節を取り上げます。


(0:37から)

リゾート気分味わってるはずの
理想の自分とは程遠い
(図3)


「イッサイガッサイ」は「ポリリズム」と異なって、1つの拍の中に複数の言葉が入っています。
なので、最初はダイアグラムにどのように配置するか迷うと思いますが、何度か曲を聞き直しながら頑張ってみてください。
コツとしては、「各小節の始まり(表の左端)の言葉を見つけること」と「各拍の始まり(があればそれ)を見つけること」です。
具体的には、リゾートの「り」は小節の頭ではなく少し前に発音されていて、
その後の「ぞ」から1拍目が始まることに気づけば、少し楽になるはずです。

このように、まず拍と小節を理解すること、次に曲のリズムをダイアグラムに配置していけること。
この2つをクリアすることが、最終的にはラップを演奏するための一番の近道になるはずです。